日本の広告業界のガリバーと言われる電通で、去年の12月、「二人目の過労自殺」があったのは
みなさんもご存じかと思います
(最初の過労自殺は、25年前にあり、これは『電通事件』として有名です)
電通では、その他にも2013年の過労死(労災)認定があったし
2015年8月には、違法な時間外労働が行われていたとして労働基準監督署から是正勧告を受けてた…ということで
電通なんて会社は(反省なき)「殺人企業」と言っても差し支えないと思うんだけど
驚くべきコトに、こんな会社が厚生労働省から、
労働時間短縮に取り組み、働きやすい「子育てサポート企業」に認定されていた…
というんだから、これは電通だけがどうかしてるんじゃなくて、政府(厚労省)もどうかしてる…
ちなみに、「子育てサポート企業」は次世代育成支援対策推進法に基づく制度で、
重大な法律違反がないことも基準となってるところ、
電通は平成19,25,27年の3回「子育てサポート企業」に認定されたんだけど、その間の26,27年に
労使協定で定めた残業時間の上限を超える、違法な長時間労働を社員にさせたとして
支社も含めて労基署から是正勧告を受けていた…っていうんだから
これはどない考えても、やっぱりどうかしてるよな、厚労省…
ところが、2015年の過労自殺で電通をかばいきれなくなったのか、
厚労省は電通の「子育てサポート企業」認定取消しを検討するとともに、こんなことも言い出してるんです↓
<違法残業新基準>「月80時間超」に…厚労省(毎日新聞 12/27)
電通社員の過労自殺を受け、厚生労働省が発表した緊急対策には、違法な長時間労働を現行の「月100時間超」から「月80時間超」に引き下げることに加え、過労死・過労自殺が複数の事業所で出た企業名を直ちに公表する新基準も盛り込まれた。新基準は早ければ来年1月から順次運用する。
新基準では複数の事業所で過労死・過労自殺があった場合などは労働基準監督署の指導を経ず、直ちに企業名を公表する。昨年度に月80時間超の残業で過労死・過労自殺と認定された人は151人で、同省は基準を厳格化して企業幹部の危機意識を高めたい考えだ。〜
この記事だけを読むと、なんだか「月80時間超」の残業をさせることが
「違法な長時間労働」であるかのように錯覚してしまいそうですけど(→かく言うぼくも、一瞬錯覚してもうたやん…)
少し前に、赤の太線強調した部分をもう一度読んで見てほしいんです
そこには「労使協定で定めた残業時間の上限を超える、違法な長時間労働」って、
書いてありますよね(…って、自分でそない書いたんやけど、実はこの部分はある記事の一部のコピペでして
この部分がなかったら、ぼくも錯覚したまんまやったかも知れません…)
どういうことかと言いますと、「月80時間超」の残業をさせたら、即「違法」になるんじゃなくて
「労使協定で定めた残業時間の上限を超えて」「月80時間超の残業をさせたとき」だけ、
その長時間労働が「違法」となる…というわけでして
要するに、「労使協定で定めた残業時間の上限そのもの」が「月80時間を超えていたら」
いくら月80時間超の残業をさせても、それは「違法」とはならない…ので
そういう場合には、「企業名の公表」というペナルティもない…ということなんですわ
(なんか、めっちゃわかりにくい話やないですか、これ…)
ここで、自己学習も兼ねて、労働基準法における労働時間のことを調べていくと
本来、「労働時間の上限」は…
「原則は労働基準法第32条で1週間40時間、1日8時間と決まっています」(厚労省HPから)
…ということで、基本的に、雇用者は労働者を残業させてはいけない…ということになってますねん
(→ホンマでっせ、これ…)
で、この原則を超える労働が法定時間外労働といって、いわゆる「残業」ということになるわけですが
残業はあくまでも例外なので、雇用者が勝手気ままに労働者に命じることができるのではなく
雇用者は過半数の労働者が加入する労働組合(あるいは労働者の過半数を代表する者)と
労働基準法36条に定める「協定」(通称36協定=時間外労働及び休日労働に関する協定)を結ばないと
雇用者は労働者に残業させることはできない…という手続が求められてます
そして、この「36協定」においても、無制限に労働者を残業させることができるわけでもなく
そこには「残業時間の制限」が設けられてまして、
それは原則として「月45時間まで」ということになってるんです
(→例外規定の残業でも、原則は「月45時間まで」でっせ…)
もし、ここで話がお終い…になるのであれば、例外の残業でも「月45時間まで」という法律上の制限があるから
「過労死ラインとされる月80時間超の残業」は皆、「違法」な長時間労働になって
過労死もなくなっていくだろうという話になるはず…
なのに、そうは問屋が卸さない…のではなくて、そうは国が許さない…と言うべきか、
「例外規定」であるはずの36協定にはなんと、例外のこれまた例外…とも言うべき「特別条項」という取り決めがありまして
それを結べば、なんと、「残業は青天井で認められる」…(って、なんちゅうムチャな話やねん、これ…)
ほな、日本を代表する大企業が、どんな(特別条項付き)36協定を結んでるのか…と言えば
その一部はこんなんです…↓
(しんぶん赤旗「過労死ライン超え残業協定 経団連役員企業など40社中78%」より)
つまり、日本を代表する大企業が率先して
「(月80時間超という)過労死ラインを超える残業をさせられる特別条項つき36協定」
を結んでるから、過労死(あるいは過労自殺)がなくならないわけでありまして
コトは電通だけの話ではなく、その他の会社はもちろんのこと、
過労死ラインを超える残業をさせてもOKよ…という労働基準法をそのまんまにしてる政府もまた共犯…
ということであります
(塩崎厚労相は、このたびの企業名公表を念頭に「過労死をゼロに」と言うとりますが
「過労死ラインを超える長時間残業をさせても違法でなくなる規定があるザル法」(=現行の労基法)をそのまんまにして
いったい、どないして過労死がゼロになると言うんでしょうかね…?)